ことば



 「鐸 声」


                        浄土宗新聞 令和元年12月号より転記

  冬が近づくと思い出すことがある。「和尚さん、冬至十日前という言葉をご存じ?」   これは、ある檀家のご主人との対話。「冬至は知っていますが、十日前とは?」と返すと、ご主人は二コニコしながら話をしてくれた。


 ◆「この時期は日暮れが急速で、しかもその時刻も大きく早まっていく。ところで12月22日の冬至が最も日没が早いと考えてしまうが、実際にはその十日前ごろがピークで、そこからは少しずつ日は長くなる(ただしこの時期、日の出がどんどん遅くなっているので、日照時間で言えば、やはり冬至が一番短い)。そんなわけで『冬至十日前から日が伸びる』という諺もあり・・・」


 ◆このご主人は「和尚さんはいろいろな知識を持っていたほうがいいから」と、時節ごとにこうした話を聞かせてくださった。今振り返れば、若い私にとって心優しい手ほきであった。やがて私は住職を継ぎ、このご恩ある方を今から6年前に葬儀でお送りしている。


 ◆先日、この方の七回忌法要をご家族と勤めた。写真を拝していると私の耳には「和尚さん」と、あの声が聴こえてきた。人間の記憶というのは不思議なもの。お姿の記憶も有り難いが、耳に響く”声のの記憶”は、さらに「あの世」との距離を縮めてくれる。


 ◆もちろん、私たちがとなえる念仏の声もご主人に届いているに違いない。


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